部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

出たとこファンタジー(樹るう、辰巳出版)

出たとこファンタジー ぷるぷる学園編 (タツミコミックス)

というわけで、樹るうについて書く。僕にとって樹るうという名前はエロ本収集していた青春時代の思い出を呼び起こす名前である。

僕が学校帰りに裏山で湿ったエロ本を悪友といっしょに拾ったり、本屋に行って2時間ほど逡巡したあげく、赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズをダミーとして「でらベッピン」を購入したりして収集していた中学、高校時代、「キャンディータイム」や「ペンギンクラブ山賊版」といったエロ漫画雑誌を買ったり拾ったりして読んでいると、良くこの人の名前を見つけた。雑誌に載っている作品は、「出たとこファンタジー」という4コマ漫画だった。

エロ漫画雑誌なのにも関わらず、エッチな描写はほとんど無かった。むしろ「花とゆめ」などの少女漫画に載っていても違和感が無いような、女の子が主人公のギャグ4コマ漫画だった。「花とゆめ」に、と書いたように、人物描写やストーリーの着眼点が女性が読んでも楽しめるだろうな、と思わせる、女性らしい視点で描かれていた(後で調べると、やはり作者は女性だった。だよなー)。

社会人になってから単行本が出たのを知り、買った。とりあえず読み返してみよう、と思いさっき部屋を探索したが出てくるのは「おみやさん」や「まんが道」や「愛、知りそめし頃に・・・」ばかりで焦った。なんだこの部屋。

で、なんとか本を探し出し(樹村みのりの短編集「雨」と一緒に出てきた。サンコミ率が高いな最近)、読み返して、「あーやっぱり面白いなー」と感じ入った次第です。理由は下記の通り

  1. 基本はテンポの良いギャグ4コマ漫画である
  2. 途中から魔法世界のファンタジー要素がバッチリの物語が始まる
  3. 伏線がきれいに消化された上で物語が完結する
  4. 彼氏との半同棲生活の描写が細かい*1(部屋にぬいぐるみ置こうとしたりご飯作りに来たり)
  5. 女の子がかわいい(エマ、リーラさま、リセット・シンシア等)

これでいて別にエロくはない。エロ漫画雑誌でないと連載できない漫画ではなく、一般誌でも通用するレベルの品質だと思った。特に1、2、3の要素を満たした漫画を描けるのは才能がある証拠だと思う。エロ目的でキャンディータイムを読んでいた高校時代にも、「樹るうが埋もれていくのはあまりにも惜しいなー」と別の漫画でオナニーした後思ったものである。最近この作者の単行本がぽつぽつ出だしたので非常にうれしい。ぜひとも活躍して行って欲しい。

あと、ナチュラル・ハイとかの別の単行本に載っている身の回りのネタ、実家のネタ、中学高校時代のネタで作られる4コマ漫画が個人的にはツボである。女性のこういう視点は好きなのである。学生時代が楽しくて思い出を大切にしている、実家に住んでいて家族を愛している、みたいな。こういう女性とお付き合いしたい(キモイ)。

影崎由那の漫画にも見られる生活描写の好ましさ、これが出たとこファンタジーの魅力であると思う。とにかく言いたいのは「樹るうの漫画は面白い」という事である。絶対、女性読者に支持されるセンスを持っていると思うのだが、掲載誌の特殊さも手伝ってなかなか知名度が上がらないようである。今後この作者が評価されていく事を切に望む。

*1:そもそも女性の心理描写が適当なエロ漫画雑誌に、半同棲している女の子の視点がある漫画があるだけで革命だと思った