部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

すべてに射矢ガール(ロクニシコージ、講談社)

すべてに射矢ガール 1 (ヤングマガジンコミックス)


というわけですべてに射矢ガールである。ヤンマガである。大学時代にちょうどヤンマガでやっていたなあ。「クーデタークラブ」と「空手貴公子 小日向海流」と「ヒミズ」と「バカ姉弟」、他に何を望むのだ、というぐらい充実していたなあ。最近読んでないけど。


この時期がロクニシコージを語るちょうど良いタイミングである訳では特にない。「ふぬけ共和国」の新田五郎さんがよく微妙に古い少年ジャンプのレビューをしているので、まあ良いじゃんと思ったのである。この日記のために本棚を漁ったら目に付いた、というだけなんです。

関西から東京の高校に転向してきた主人公の山田君が、隣の席の女の子、あすみの頭に矢が刺さっているのが気になってしょうがなくなって観察したり接触したりする話である。

最終的に、何故頭に矢が刺さっているのかは明らかになるが、あまり重要なことではない。この物語の良いところは、「矢が頭に刺さっている」という凄いハンディキャップを持った同じクラスの女の子と、山田君が仲良くなって行く過程が面白く、微笑ましく、なんか青春だなーちくしょーこんな高校生活じゃなかったからなー俺という感じなのである。

あと、山田君が無個性な主人公じゃないのも面白い点である。無個性な主人公というのは、主人公の視点で物語を語るような場合によくある。パソコンのエロゲーの主人公によく使われる手法である。
頭に矢が刺さった、ちょっと変なかわいい女の子(そう、かわいいのだ)というとても強烈なキャラクターがメインで進行するにも関わらず、山田君はギターを習ってみたり、「この子は本当は冷たい人間なのではないか?」と疑ってみたりと個性がある。高校のクラスにいる男子だ。理系ではない。むしろイケてる、女の子にモテるタイプだ。だからエロゲーの主人公ぽくないのだろう。僕を含むコミュニケーション不全だった理系男子とは違う存在である。羨ましいぜうっひひ。

「ウヒヒ」と書こうとして「うっひひ」と打ってしまったがむしろこっちの方が良いと思ったのでママとする。

それはさておき、あすみの持つ頭に矢がある事で生じる弊害や心の傷が描かれている。荒唐無稽な設定だからといっていい加減な設定ではない。普通ではない事に彼女が苦しんでいる事を山田君は発見する。あすみは人とは違う事の苦しみ、「なぜこうなってしまったのか」という嘆きを抱えて、何重にもひねくれてしまっている。基本的にはギャグ漫画だが、「頭に矢が刺さっている」という設定を、「何らかの障害を持っている」に置き換えて読んでもかなり大した漫画になっていると思う。褒めすぎかもしれない。


少年の、人とは違うハンデをもって生きる女の子との出会い、そして共に成長していく物語である。ヤングマガジン独特の現代感覚を持っているのですんなり、かつ面白く読める。そして女の子がかわいい。僕のような漫画マニアよりも、ヤンマガ読み捨てる普通の男子の方が、良い印象を持って読める漫画だと思う。漫画喫茶で読んでみて気に入ったら「コグマレンサ」も読んでみよう。
かなり引っ張ってしまったが終わり。