部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

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ナポレオン獅子の時代(長谷川哲也、少年画報社)

ナポレオン 1―獅子の時代 (ヤングキングコミックス)

ナポレオン 1―獅子の時代 (ヤングキングコミックス)

というわけでナポレオン獅子の時代である。ヤングキングアワーズで連載中の、ナポレオンの生涯を描いた伝記漫画である。よって主人公はナポレオンであるが、ナポレオンが皇帝になる過程の一エピソードであるフランス革命やツーロン攻略戦で登場する人物達が異様にキャラ立ちしているため、2005年9月現在、密かに話題となっている。二年前のホーリーランドぐらいの話題のなり方であろうか(凄い狭い世界での例え)。

単行本第一巻では、クラウゼヴィッツの「戦争論」にも書かれた(らしいよ。読んだ事無いけど)、アウステルリッツ三帝会戦が描かれる。ちょっとだけ「花の慶次」ぽい展開があるが気にせず読み進めると、下っ端の兵卒の描き方が素晴らしい事に気づく。

戦いが始まり最前線で敵の進攻を待ち構え、恐怖のあまり震えて嘔吐する兵士(その後撃たれて死亡)、進攻してくる最前線で、銃を持たずただ前進するのみの鼓笛隊(やはり撃たれて死亡)といった名もなき兵士の死にっぷりのあっけなさが、この作品が戦場を描いた漫画だということを教えてくれる。戦場において、歩兵は駒なのである。「故郷ででかい事言ってきちまったからな、手柄上げて帰らないと」と思っている男たち(ここでは野郎どもと呼びたいところだ)があっけなく死んでいく。戦争は嫌いだが、戦場漫画には燃える。男のロマンだなー。

フランス革命も凄い。「ベルサイユのばら」で有名なフランス革命のパリは、バラどころかギロチンで切られた生首が町に転がり、民衆は暴徒と化している。国賊の墓が暴かれ、半分腐った死体がゴミ捨て場に放置されている。オスカルとアンドレの出る幕なし。マリーアントワネットもあっさり処刑される。ジャコバン派の面子は皆、原哲夫作品で言うところの「漢」だし、ナポレオンじゃなくて「フランス革命」で作品にしても良いくらいである。個人的MVPはロベスピエール松田優作似の画家(多分ダヴィッド)である。


ナポレオンもそうだが、この作品に出てくる男は、みんな馬鹿である。最前線の砲台に「命知らずの男たちの砲台」という名前がつけば、「俺が行くしかねえか」とつぶやいて我先に死にに行くのである。馬鹿で、勇敢で、スケベで、ユーモアがある。今の世の中の大多数になっては困るのだが、個人的には快哉である。男とはこうあるべきだ、と酒飲んだら行ってしまいそうになる。


ちょっと展開が早いところもあるが、熱い男の群集がゲロ吐いたり血を流したり砲弾で身体を吹き飛ばされたりしながら戦場で右往左往する展開には燃えまくりである。ナポレオンが戦場で剣を振り回すうちに味方切りつけてしまって「やべ、味方だった」とか「俺の周りなんか空いてる。俺も銃剣か槍にすれば良かった」とか考えているシーンが非常に面白い。マルモンとでぶ野郎コンビも最高である。デブじゃなくてでぶ野郎なのも良い。


まだ物語はネルソンが登場したばかりで、これからテルミドールのクーデタとかトラファルガーの海戦とか、戴冠式とか、冬将軍に負けたりとかするはずなので非常に楽しみである。
あと念のため、
大陸軍(グランダルメ)はーっ」
と言われたら、もちろん答えは
「世界最強ォォーッ」
です。世界一ィィーだと鉄砲で撃たれるか斬られるので注意。