部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

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黄色い本―ジャック・チボーという名の友人(高野文子、講談社)

黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))

黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))

というわけで「黄色い本」である。知っている人は知っているが、知らない人はまったく知らない、日本漫画の一つの最高峰であるところの高野文子である。*1本当に、日本の宝である。

「誰それ?」という人がほとんどだと思うので、とりあえずグーグルで「高野文子」と検索して欲しい。

小学校、中学校、あるいは高校の図書室で本を借りて読んだ事のある人、図書室で本を借りる事が好きだった人なら共感できる、本を読む時に感じる感覚が、この漫画の中で表現されている。小さい子との会話や、家族の会話も共感することしきりである。

描写する情景の選択が、本当にもすばらしい。お母さんが入院しているために親戚の家に泊まっている小さい子供や、そのお母さんが外泊で一旦帰ってきたときにお母さんの腰の辺りに丸まってくっついて眠る子供の描写に僕はやられました。

物語は、就職活動を控えた高校三年生の女子高生である実地子(実っちゃん)が、「チボー家の人々」という小説を学校の図書室から借りて読んだり、就職活動したり、本の中の世界に入り込む妄想をしたり、革命のために働く本の中の登場人物たちと、学校でであった大学生*2を重ねたりする話である。でも、やっぱり描写が凄いと思う。僕が尊敬する漫画評論家の足立守正氏もべた褒めだったし。


普通、手に取らないタイプの作家だが、月刊アフタヌーンにひょっこり描いたり、モーニングの上野顕太郎の漫画にカエルのイラスト寄せたりしてたり北村薫の小説の挿絵とか描いているので知っている人もいるかもしれぬ。読んでもらいたい。本人も「本当はトラック運ちゃんがドライブインで昼ごはん食べながらおもむろに読む雑誌とかに描いてみたい」とか言っていたし。数年に一回ぐらいしか活動しないけど、氏の新作を、ずっと待ち続ける所存です。

*1:あとは手塚治虫大友克洋とか

*2:学生運動が盛んだった1960〜70年代が舞台と思われる