部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

シグルイ(原作:南條範夫、作画:山口貴由、秋田書店)

シグルイ 5 (チャンピオンREDコミックス)

というわけで「シグルイ」である。気が狂っていて(文字通り)嫉妬深くて剣の達人である岩本虎眼先生や、内弟子でちょっと異常な位真面目な主人公である藤木源之介や、男娼とまぐわってる時に同じタイミングで一緒に果てる舟木数馬・兵馬兄弟とか、素敵な登場人物ばかりのすばらしい時代劇漫画である。ちなみに「シグルイ」とは死狂いの事である。「葉隠」の一節に「武士道とは死狂いである」とある所から来ているらしい。この「死狂い」についての作者の解説がすばらしい。曰く、

「武士道においては、相手が上手であろうと、多勢であろうと向かってゆかねばならぬ場合が殆どあり、そのような困難に勝利して見せることが、すなわち役に立つということである。

(中略)

死狂いとなって事に臨むものだけが、勝負の行末が明らかな戦いを、予測不可能の領域にまで押し上げることができる。

(中略)

死狂いこそ命の最後の拠り所となるものである。」(2巻巻末「狂気について」より)

この作者はいつも、笑い者にされるような真面目さで残酷描写や真剣勝負を描くが、このような信条を持っているのであれば、なんとなく納得が行くものである。なので、ネット上での評判は、初め「気持ち悪い」とか「虎眼先生サイコー」といった奇異の目での評価ばかりだが、そのうち、この死に物狂いの生真面目さに尊敬の念を感じるものが多数現れる。荒木飛呂彦の評判に近いものがある。

ともあれ、物凄い真面目さで描く、残酷で狂っていてなおかつ淫靡な「残酷無残時代劇」の行く末は、これまで私が見た事の無い領域に行くものと期待している。

あと、男なら伊良子より藤木、藤木より山崎九郎右衛門(ちゅぱ衛門)に超シンパシー。