部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

クドリャフカの順番(米澤穂信、角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

昨日感想を書いた米澤穂信〈古典部〉シリーズの続編、「クドリャフカの順番」を読了しました。これも面白かったです。同シリーズの中で一番分厚い文庫本だったから、通勤時間がしばらく楽しいなあと思っていましたが、どんどん読み進めてしまったので二日で読了してしまいました。

さて、この作品で面白いと思ったのは以下の要素です。

  1. お料理研究会主催の料理対決といった高校文化祭の描写
  2. 前作までの登場人物が多数再登場している
  3. 伊原さんが漫画論を戦わせるところ
  4. これまでと同じく折木くんの推理で問題解決(ただしほろ苦い)

それぞれについて以下に細かく述べたいと思います。

1.お料理研究会主催の料理対決といった高校文化祭の描写
〈古典部〉シリーズで重要なキーワードだった、神山高校の文化祭、通称「カンヤ祭」が今回の舞台です。ついに開催されて古典部も文集「氷菓」を販売する事になりました。そこでちょっとしたトラブルが発生し、部員みんなが奮闘する、という感じの物語です。

で、今回は舞台が高校の文化祭当日なので、色々な催し物が絡んで楽しい雰囲気になっています。「究極超人あ〜る」の春高の雰囲気に似ています。お料理研究会主催の「ワイルドファイア」という料理バトルイベントに古典部が出て熱い展開になったり、グローバルアクトクラブの展示とか、漫画研究会は部員がコスプレして文集販売してたり、製菓研究会はカボチャの頭をつけてクッキーを販売しているし、占い研究会は廊下にテントを建てて占いコーナー作っているし、放送部はお祭り情報を放送しているし、新聞部は二時間に一回号外を出す、という感じで、大変楽しい文化祭の雰囲気が感じられます。

あと、冒頭に出てくる文化祭パンフレットの出展者一覧と、文化祭実行委員の一言が載っているところを読んで、自分の高校時代の文化祭を思い出しました。この物語みたいに手の込んだ催し物はそんなに無かったですし、必ずしも楽しい思い出ばかりではなかった高校時代でしたが、文化祭当日というのは確かにこんな雰囲気で気持ちが盛り上がっていたなあと思います。作者はほぼ同年代(僕は一つ年下)なので、きっと同じ感じの文化祭を体験していたのではないかと思います。

2.前作までの登場人物が多数再登場している

この作品の中では、「氷菓」、「愚者のエンドロール」で登場した人が再登場しています。
例えば新聞部部長(作中では引退して元部長)の遠垣内さん、「女帝」という凄い異名を持つ入須さん、エキセントリックなキャラの沢木口さんなどです。文化祭ですからいろいろな部活、クラスの人が登場するわけで、オールスター集合みたいな感じがします。
なので、このシリーズはこの作品で完結しても不思議ではない感じがしました(終わってないみたいですが)。

3.伊原さんが漫画論を戦わせるところ

古典部部員の伊原さんは漫画研究会も掛け持ちしているため、文化祭当日は漫画研究会のところに詰めています。上述のように漫画研究会はコスプレする事になっているので伊原さんも嫌々ながらもコスプレ姿です。

で、コスプレ対象に選んだ作品が渋い(11人いる!、エスパー魔美七色いんこ*1 )というのも結構ポイント高いのですが、それよりも良かったのが、伊原さんに何かと突っかかってくる河内先輩との漫画論バトルです。「面白い、面白くないは個人それぞれの主観の問題」と言い切る河内先輩に断固反論する伊原さんが熱いです。反論の証拠として自宅に保管している、去年の文化祭で売っていた同人誌漫画を持って来ようとします。いやあ、やはりこの作者には好感が持てます。

この一連のやり取りで、メインヒロインの千反田さんより伊原さんにときめいてしまいました。料理上手いし。

4.これまでと同じく折木くんの推理で問題解決(ただしほろ苦い)

すっかり探偵役としての存在感がある、折木くんが最後には事件を解決します。そしてまたしてもほろ苦いです。どうほろ苦いのかは内緒なので読んでください。
ただ、今回はやはり文化祭という事で、全体的に明るい雰囲気となっています。


という事で青春推理小説みたいなくくりで楽しめる一冊だと思いました。ああ続きが読みたいよー。次は「遠まわりする雛」か。文庫じゃないから値段高いみたいなので悩みどころですが書店で見かけたら買ってしまうのであろう。

あとこの作品は、四人の古典部員(折木くん、千反田さん、福部くん、伊原さん)のそれぞれの視点のものが入れ替わり立ち替わるような書き方になっています。文章の冒頭にはそれぞれスペード、ハート、ジャック、ダイヤが描かれており、誰の視点なのか分かるようにしています。トランプのマークが古典部の誰にそれぞれ、対応しているのかは、〈古典部〉シリーズの他の作品を読んだ人ならだいたい分かると思いますが、野暮ったく説明しちゃいますと、

スペード:折木くん
ハート:千反田さん
ジャック:福部くん
ダイヤ:伊原さん

となります。これもミステリの古典のオマージュとかになっているのかもしれませんが、全然そっち方面詳しくない僕には分かりませんでした。章の番号の付け方も独特だったし、何か理由があったのでしょうけども。でもそんなの関係なく楽しめると思います。


ではー。

*1:文庫になる前のバージョンでは「11人いる!」ではなく「ヴァンデミエールの翼」だったらしい。それはマニアックすぎると思いました。