ZOOKEEPER(ズゥキーパー) (青木幸子 作、講談社)
- 作者: 青木幸子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/22
- メディア: コミック
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インターネット上で私が信頼している漫画紹介サイトとして、「漫棚通信」さんの
漫棚通信ブログ版
というWEBサイトがあります。こちらの記事は漫画に関する大変に見るべきものが多いブログなので愛読しているのですが、こちらに
「ZOOKEEPER」という漫画について紹介している記事があり、大変面白そうなので買って読んでみたところ大変面白かったので何かこの作品について書いてみようと思ったのでした。
要点はほとんど上記の漫棚通信さんのブログで記述されており、私が敢えて書く事が無いようにも思えてきますが、面白いと思った点は以下の通りです。
1.動物園(ZOO)の飼育員(KEEPER)が主人公。だから「ZOOKEEPER」
「コマ動物園」という、丘陵を利用した広大な敷地が特徴の動物園が舞台です。東京在住の方なら「多摩動物公園」がモデルだろう、と想像できると思います。
ここで働く女性飼育員「楠野 香也(くすの かや)」が主人公です。
2.熱を目で感じ取る事が出来る、という特別な力を持つ。しかし「必ずしも役には立たない」
主人公は目で対象の熱を感じる事が出来ます。たとえるなら、サーモグラフィー装置が目に備わっている感じです。
これを利用して、夜の暗闇の中で動く動物の位置を知る事が出来たり、動物の体調の悪化を察知したり、また、その人が嘘をついているかを知る(嘘をつくときの緊張を体温で察知する)事が出来ます。
主人公は動物や動物園にまつわる様々な問題に直面して取り組んでいくにあたり、この便利な能力を使います。
しかし、長時間使うと頭痛がしてしまうので、ここぞという時にしか使えません(なので普段は特殊なメガネを付けて負担が無いようにしている)。
また、この能力は便利ではあるのですが、物語の中ではこの能力は補助的な役割であり、どう使うかという知恵や、なんとか問題を解決しようという主人公や仲間の熱意の方が大事なものとして描かれます。便利な道具があっても、これで簡単に問題を解決させず、知恵を巡らせて解決策を見出していく、という「ひねり具合」がとても好印象です*1。
3.動物園にまつわる様々な問題に、主人公および同僚の飼育員達が取り組む姿が魅力的
主人公は動物園に飼育員として勤務していますが、ここで様々な問題が起こります。たとえば、
- 飼育していたチンパンジーが脱走して人を傷つけてしまった。どうするか?
- 無責任な飼い主が下水道にワニを放してしまったので捕獲に協力して欲しいと警察から連絡が来た。どうやって捕まえるか?
- 心に傷を持った少年が、動物園で飼育しているアナグマを傷つけてしまった。アナグマと少年の傷を治す事が出来るか?
など、動物を絡めたドラマ性のある話が登場します。さらに
- チーターは世界最速で走る事の出来る動物だが、全速力で走るチーター本来の姿を展示する事は出来るか?
- 交配が期待されるインド象のオスが原因不明で苛立ち、メスに近づこうとしない。どうしたら自信を持たせる事が出来るか?
- 出産が間近のアルマジロのメスが、周りがどんなに配慮をしても落ち着こうとしない。安心して出産を迎えることが出来るか?
というように、動物園で実際にあるんだろうな、と思わせる、動物の飼育にまつわる諸問題にも取り組みます。
これらの問題に取り組んでいくうちに、更に大きい問題にしばしぶつかります。それは動物の虐待だったり、経営が立ち行かない動物園の現状だったり、野生の動物が生きていく事が困難になっている現在の地球環境、というものです。これらに取り組むうちに
「人間が動物を飼う意味とは何か?」
「現代において動物園は何のためにあるのか?また、あるべきなのか?」
という問い掛けが繰り返し現れます。
問題に取り組むのは主人公および動物園で一緒に飼育員として働く同僚たちです。各動物毎の担当として各エピソード毎に登場しますが、みんな個性的です。
特に良いなと思うのは、「動物の飼育」という仕事に取り組む真剣さを、登場する飼育員ほぼ全員が持っている事です。チンパンジー担当の人も爬虫類担当の人も、コアラ担当の人もインド象担当の人もみんな、担当の動物が好きで、動物たちの為に問題を解決しようと取り組みます。仕事に真剣な社会人の群像ドラマとしても大変魅力があります。
個人的に一番好きなのは、神経質で完璧主義者だけど実は情に厚い、コアラ担当の小田さんです。
あと、後半に出てくる年老いたアフリカ象「大ちゃん」と、その世話を長年してきた老飼育員「シゲさん」の話も個人的に大好きです。
4.主人公の職場のボスである園長が曲者ですごく格好良い。もしドラマ化しても適役いないのでは?と思う程
主人公たちが問題に取り組んでいる際に助言をしたり、時には問題をけしかける人物として、コマ動物園の園長「熊田 大地(くまだ だいち)」がほぼ全ての話に登場します。
園長はテレビに頻繁に出演してタレントのような活躍をしており、コマ動物園のマスコットキャラクターのような役割をしていますが、動物園においては頭脳明晰、辛辣で厳しい上司です。また、役所との折衝も根回し、恫喝などで乗り切る、「腹芸」が出来る大人です。そして上述のテーマ「動物園は何のためにあるのか」について誰よりも考えている人でもあります。裏表があって大変素敵です。
癖がありすぎで、もしドラマ化した際*2に適役が思い浮かびません。
この園長が主人公の特別な力や、それ以上に大事な「問題を解決する方法を見つける力」を見出します。この人が影の主人公だと思います。
5.単行本が大きい書店でなければ売っていなかった。地味かもしれないが埋もれるのは惜しい作品だと思う
ここまで書いてきたようにとても面白いと思える作品ですが、現時点でほとんど書店でみかける事はありません。東京の書店だとジュンク堂の池袋店、新宿店で見つける事が出来、あとは浜松町のブックストア談ぐらいでしょうか。大手も大手でしか売っていないようです。
なんか「俺がこの面白い漫画を見つけたんだぜ!」と今更見つけたのに言うつもりは全く無いのですが、面白い漫画なのに読まれないのは惜しいと思います。アマゾンなら全8巻買えるようですので興味のある方はぜひ。お勧めです*3。
あと、作者の青木幸子さんという方は2010年10月現在、「王狩」と「茶柱倶楽部」という作品をそれぞれ「イブニング」および「週刊漫画TIMES」にて連載中で、最近単行本も発売されたようです。こちらもチェックしていきたいと思います。
- 作者: 青木幸子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/22
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- 作者: 青木幸子
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- 作者: 青木幸子
- 出版社/メーカー: 講談社
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- 作者: 青木幸子
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ではー。