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部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

魔法使いの娘(那州雪絵、新書館)

漫画

魔法使いの娘 (8) (ウィングス・コミックス)

魔法使いの娘 (8) (ウィングス・コミックス)

「ここはグリーン・ウッド」「嵐が原」もこれまでに買っていて私がかなり好きな漫画家、那州雪絵の「魔法使いの娘」の完結8巻が発売されたので、先日購入して読みました。面白い漫画を読んだ時はいつもそうですがニヤニヤしてしまいました。文句なしの名作です。

主人公は鈴の木 初音(すずのき はつね)という高校生の女の子です。家族は父親は鈴の木 無山(すずのき むざん)との二人暮らしです。母親はいますが何年か前に離婚して別居しています。
無山は家事がまるっきり出来なくてだらしなく、初音にいつも怒られてばかりですが、実はとても有名で力のある陰陽師で、日本の裏の社会で活躍しています。
初音も陰陽師の才能があり、式神として管狐(愛称はテンテン)を飼っていたりしてます。

そんな初音や無山が霊をお払いしたり他の陰陽師と戦ったりする、ギャグ要素ありのオカルト漫画、みたいな感じだと私はこの作品を読まなかったと思いますが、なにしろ作者が「那州雪絵ですので、とにかく単行本を買って読んでみたところ大変面白かったのでした。とりあえず良いと思うところを箇条書きにすると以下のようになります。

  • 淡々と描かれる陰陽師の世界と日常生活
  • 凄く意味ありげな伏線が見事に回収される
  • 劇中で成長していく魅力的な登場人物

以下、すこしずつ解説を試みます。



■淡々と描かれる陰陽師の世界と日常生活
「パパの職業は陰陽師です」と言われても、陰陽師というのは漫画の世界だけの荒唐無稽な設定じゃないのか、と思ってしまうのですが、この作品は「本当に陰陽師という職業がありそうだ」と思わせてくれます。
無山は日本で一番強大な陰陽師で、日本の上流階級や企業が、いわくつきの土地のお祓いを依頼してきたり、邪魔な相手を呪い殺して欲しいと依頼してきます。「鈴の木流」という組織があり、無山はその頭首という肩書きです。
その仕事ぶりは淡々と描かれます。式神を行使して霊を祓ったり、名家の跡取り息子の恋人の子供を、その母親に依頼されて呪い殺したりします。かなり酷いこともしていますが、あくまでも淡々と描かれ勧善懲悪といった救いは無い事が多いです。

日常生活も淡々と、実際にありそうだと思わせてくれます。初音が物語の中で無山が用意したマンションに住むくだりがあるのですが、管理組合の会合に出たり、近所の主婦の世間話に付き合ったり子供の面倒を見たりしますが、作者の実体験ではないかと思ってしまう、本当らしい出来事が描かれます。そもそも漫画で「マンション」という舞台になったときに、管理組合の会合に出席とか、マンション内の育児施設でバイトとか、勝手な事して回りに煙たがれている住人が丁寧に描かれている漫画(そしてこれは陰陽師が主役のオカルト漫画です)はあまり見た事がありません。

これだけでかなり漫画読みはグッと来ます。

■凄く意味ありげな伏線が見事に回収される
漫画や小説で、「その場では意味が明らかにされないが、後の物語に影響を与える出来事」を「伏線」と言いますが、この作品は伏線が一杯あります。
例えば、初音は初めは高校生ですが、卒業後も特に就職したり進学をしません。本人はかなり真面目な性格ですが、その事をあまり気にしていません。それは何故なのか?
また、初音の両親(無山とその元妻)は、実は初音の実の親ではありません。実の親は小さい頃に亡くなっていますが初音は無意識にその事を忘れて暮らしています。それは何故なのか?
あるいは、無山が初音を引き取ったのは何故なのか?
こういった伏線が、最終巻までに見事に回収され謎が解けます。全部は書きませんが、多分一巻の時点から最終回まで考えて作っていたんだろうな、と思える緻密な作り方だなあと思って感心してしまいます。そして当然ながら効果的に明らかになっていくので読んでいて引き込まれてしまうのでした。

■劇中で成長していく魅力的な登場人物
第一巻から登場する人物として、無山の一番弟子である篠崎兵吾(しのざき ひょうご)がいます。最終巻まで初音の相棒として活躍しますが、初登場時は師匠である無山の娘を殺してしまおうと企てる悪人でした。しかしその企みは無山に知られており、逆に呪いをかけられて無山の言う事に逆らえなくなり、その結果初音を助ける事になります。

しかし、物語が進むにつれて兵吾の心境は変化していきます。無山からかけられた呪いは物語の後半には解けますが、それ以降に兵吾は自発的に初音を助けていきます。それは何故、と初音は問いかけますが、その答えは最終話で明らかになります。この溜めはすっごく良いです。「ここはグリーン・ウッド」で五十嵐さんに告白するすかちゃんを初めて見た時と同じ気持ちになりました。良い作品だ。

そのほか、見た目は少年ですが凄く強い鬼で無山の式神の「小八汰(こやた)」とか、無山の弟弟子の「無畏(むい)」とか、ゴスロリ少女だけど実は人形の「操名(あやな)」とか、見た目は強面のヤクザだけど実は神主の「ジュニア」など、魅力的なキャラクターが一杯です。あと、後半出てくる初音の実の両親も、彼らが主役のサイドストーリーを描いて欲しくなるほど魅力的です。続編での関わり方を妄想する考えるだけでニヤニヤ出来ます。幸せだ。

という訳でとても面白い漫画である事のアピールに努力してみました。

なお、「魔法使いの娘」は完結していますが、続編として魔法使いの娘ニ非ズ」という作品が新書館から出ているウィングスという雑誌で現在連載中です。

また、2011年9月時点で単行本1巻が出ています。これから入っても大丈夫な作りではありますが、やはり「魔法使いの娘」も読んだ方が楽しめる事には間違いありません。ちょうおススメです。

魔法使いの娘ニ非ズ (1) (ウィングス・コミックス)

魔法使いの娘ニ非ズ (1) (ウィングス・コミックス)

ではー。