部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

ここはグリーン・ウッド(那州雪絵、白泉社)

ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)

ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)

というわけで「ここはグリーン・ウッド」である。グリーン・ウッドには都合、3度出会っている。

まず、最初の出会いは中学生の頃にNHK衛星第2でやっていた「BSアニメ特選」だった(このころは漫画、アニメにはまることに何ら違和感を持っていなかった)。「男子寮が舞台の青春ストーリーなんだろうなー。原作の漫画を読んでみたいなー」と思ったが、この頃はまだ「思い立ったら即購入」という姿勢と資金を持っていないので、存在を忘れてしまって中学校を卒業してしまった。


なのでこの漫画と出会ったのは結局高校入学後にM君という友人から借りて、であった。これが2度目の出会いである。


高校一年の時、クラスで漫画の貸し借りが流行したのだが、この漫画貸し借りブームの際、M君は自らの漫画蔵書をルーズリーフに鉛筆で一覧で書いてリストにする制度を編み出した。リストのうち気に入った漫画に○をつけてM君に返すと、翌日M君がその漫画を持ってくる、というシステムだ。これは貸し借りをスムーズに行うと共に、「おれ、漫画こんなに持ってるんだぜー」という自己顕示欲を満たす事もできるという事で、漫画マニアの素質があった僕もこれに習ってリストを作ったものである(ただしリストには「うしおととら」と「機動警察パトレイバー」しかなかった)。後に、このリストを積極的に作るものと、借りて読むだけのものに分かれる事に気づき、オタクと非オタク、あるいはクラスで目立つグループとうまくなじめないグループの隔たりを感じ始めたものであった。


それはさておき、M君の蔵書リストに「ここはグリーン・ウッド」があった。他には「ぼくの地球を守って」があったがこれは姉が持っていたし、少女漫画を男同士で貸し借りするのもなー、と思い、「ここはグリーン・ウッド」を借りる事にした。少年が主人公の青春ストーリーなので、少女漫画とは考えもしなかったのである。翌日、M君が花とゆめコミックスを教室に持ってきたのを受け取る際、かなり恥ずかしかった事を覚えている。で、読んでみた感想は「五十嵐さんが出てきてからは面白いなー。前半はよくわからん。」であった。そんな感想を本を返す際にM君に言ったと思う。

男子校の高校に入学した少年が、緑林寮という男子寮(だからグリーン・ウッド)で生活しながら繰り広げる面白おかしい物語である。ゲーム買い込んでゲーセン部屋にしたり、実家から届いたみかんを配ったりという生活に、高校生当時は憧れた。大学の学生寮を卒業した今は懐かしい。

五十嵐さんというのは、後半に登場するヒロインである。色々と問題を抱えていて強がっているが実は弱っているのを主人公の少年が助けるのである。もちろん男子寮の先輩や仲間たちが後押しをしたり励ましたりしてである。青春物語ですよ。大団円は喝采ものですよ。でも当時は途中のギャグや男同士の恋愛みたいなサイドストーリーが良く理解できず、最後の大団円の印象と寮生活の楽しさしか印象に残っていなかったのである。


3度目の出会いは、大学時代に通ったブックオフである。寮の仲間と敢行した

  • 「スピリッツ増刊に載っていた、名前忘れたけど面白かった作者の本探しツアー*2

等を経てブックオフの漫画コーナーでめぼしい購入物が無くなってきた頃、高校時代に読んだ漫画を見つけたのである。「今、寮に入っている事だし、上手い具合に筋を忘れているし、ちょうど良いや」と思い、購入した。ここでの感想は「すげー面白い。ていうか旭兄さんと倫子さんのその後をやってくれー」だった。お姫様である事をやめて絵を描き続ける倫子さんと家を捨てられない旭。むしろこっちメインで、という気持ちで一杯だった。こういう「都会で1人で頑張る」というシチュエーションにめっぽう弱いのである。なので藤子・F・不二雄の「山寺グラフィティ」も大好きだ。

あと、五十嵐さんの境遇が半端でなくヘビーである事に気付く。僕だったら、後のことを考えて手を出さなかっただろう(最低)。幼馴染の男の子に依存気味な彼女と彼女の家族のことを考える。ヒロインとの恋に障害はつきものだけど、この恋の障害はあまりにも現実的で、かつ大きい。

でも、と諦めない主人公は冒険に出、そしてロマンスを手に入れる訳ですよ。繰り返しだけど素敵な寮の仲間達に助けられて。この、「頑張っても駄目なものは駄目」という境遇を持った忍の物語もあるにも関わらず、主人公が「頑張って頑張って頑張って何とかする」展開がたまらん。いや、本当は付き合ってから大変だと思うよ。でも、二人が好き合っているから良いんだよねー。

あとは光流先輩と忍先輩の関係なのだが、これはふじょし(腐ってる方)のお姉さまがたが散々語ってきたのだろうから特には書かないが、忍は光流と出会わなかったらちょっと痛い人だったと思う。一番弱いかもしれない*3。こういう風に各キャラクターの事について語りたくなるほどに個性的、かつ人間味がある。立山先生も良いし野山も良い。主人公の兄である一宏とすみれちゃんとの出会いも良い。人間描写の鋭さ、が少女漫画の範疇を超えている。保険医の兄*4、幼馴染に依存している家族を持った女の子、家を飛び出した深窓の令嬢、親が居ない故に諦める恋、など、比べられたくないだろうけど弘兼憲史の「人間交差点」みたいのも出来ると思う。この作者は凄い。

那州雪絵は今「魔法使いの娘」という作品を、新書館のウィングスという雑誌で連載している。女の子向け雑誌(しかもマイナー)なので男子には手が出にくいが、要チェックだ。勇気を出して本屋の少女マンガコーナーへ行こう。最後グダグダな日記だが終り。

参考:「ここはグリーンウッド」データベース〜GreenBox
http://green-box.hp.infoseek.co.jp/index.html

*1:これで岸大武郎を知った

*2:村上かつらと後で判明。2000年当時、単行本は無かった

*3:それでいてクールぶっているところが良いのか。おじさん、女の子の考える事はわからん

*4:「男で保険医なんてやってるのは駄目な人」みたいな事をキャラクターに言わせているところが凄い。本当に駄目なのかは読めばわかるが