部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

ストロボライト(青山景、太田出版)

ストロボライト

ストロボライト

先月はほとんど浜松町で遅くまで勤務しており鬱屈した気持ちでおりましたが、ある時ふと浜松町駅に隣接した貿易センタービルの中に書店があることに気づいたのでそこで漫画を買いました。その際買う条件にしたのは、

  • 一冊で完結していて、
  • 知らない作者の作品で
  • 良い匂い(面白そう)

というものでした。

この条件を満たすと思われたのが、青山景という人の「チャイナガール」という漫画でした。

チャイナガール (ビッグコミックス)

チャイナガール (ビッグコミックス)


この作品の感想は微妙な感じだったので良い匂い、というのは当てにならなかった訳ですが、同様の感想を書いているブログを仕事の合間に見つけたのでした。で、他の記事を眺めていたところ同じ作者の他の作品は褒めていたので気になり、野暮用で出かけた京王永山駅前の本屋で見つけて買ったのが、「ストロボライト」です。

で、感想です。

  1. 大学生の恋愛にありがちな展開(僕は体験してないですけど)
  2. ヒロインより実和子(高校時代)の方が色々な意味でかわいい
  3. ストーリーはありふれた話だが見せ方に捻りがあって良かった*1

という三点でまとめてみました。確かに面白かったです。

中途半端な大学生が主人公の話ですが、同様に大学生が好きそうな感じです。
小説家を夢見たり、
マイナーな映画にはまったり、
とりあえず女子に興味があったり。

ああ、無駄に張り切っている大学生男子(特に一、二年生)です。そして、かつて私も彼らのようなものであった(by三好達治)。室蘭工業大学生協の書籍店で売っていたら、学生時代の僕は買っていた事でしょう。

ストーリーは特段凄い話ではない(大学生男子が女の子と付き合って振られるけど、何故か彼のことが好きな女子高生がいたりして、何だかんだあって何年か経ったら念願の小説家になってかつての彼女に会いに行って立ち話をして帰る、終わり)のですが、大学生ぽい描写が真に迫っていると思わせます。

たとえば彼女が暮らすアパートの部屋の間取り、家具などは、一人暮らしの女子大学生にありがち(いやそんなに知らないですけど雰囲気的に)に見えます。ええ、リアリティがあるという奴です。

そしてどうでも良い理由で彼女とけんかしたり、自分が好きな映画のヒロインと彼女を重ねて倒錯したりするのも大学生という感じがします。

さらに言うと、この作品の演出、小説家になった主人公が書いた小説だった、とか主人公が好きな映画の場面と現実のシーンが交錯するところとかも、いかにも若くて斬新な事をしている感じがして、ここでも大学生だなあ、と感じました。

この文章の中では「大学生」というのは、後から振り返ると恥ずかしいけど楽しい時期にいる若者、として表現しています。そういうこそばゆい感じが良い感じです。

で、こういう若い感じの表現をしている作品を描く人が小学館から単行本を出すと「チャイナガール」になるというのは感慨深いです。両者を比較すると、作者がやりたい事はどっちかというと「ストロボライト」の方ではないかと思えます。

でも、大人になるとは妥協することだと思いますし、プロの仕事とは「やりたくない事をやって本当にやりたい事をやる」事、と岸大武郎の漫画にも書いてあったので、プロの漫画家である限りは「チャイナガール」みたいな仕事もしないと駄目なわけです。ああ非常に感慨深いなあ、と実際はどうかを全く考慮せず、勝手に納得して楽しんだ次第です。おっさんになったんだなあ。

ではー。

*1:連載していた雑誌が「コンティニュー」なのも関係しているのか