よんでますよ、アザゼルさん。(久保保久、講談社)
- 作者: 久保保久
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/23
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数年前にpixivというイラスト投稿用WEBサービスが気になり、見てみると人気のイラストや漫画に「アクさく」とか「ベーさく」という説明書き(『タグ』と呼ばれます)がついていて、読んだら大変面白かったので気になっておりました。
調べると「よんでますよ、アザゼルさん。」という2010年にやっていたテレビアニメがネタ元であること、アニメの原作は漫画である事が分かったので、これは一つ読んでみよう、きっと「アクさく」とか「ベーさく」要素もあるのだろう、と思った次第です。
そして、思っていたのとまったく違う方向に予想を裏切られたのでした。
面白いけどひどい。そういう感想になりました。
表の顔は「芥辺探偵事務所」の所長で、悪魔を魔界から召喚して使役する事が出来る怪しい私立探偵の「アクタベさん」
探偵事務所で事務のバイトをしている女子大学生の「さくまさん」
が色々な依頼をこなしていく、というのが主なあらすじです。題名の「アザゼルさん」というのは、主に召喚される悪魔の名前の事で、一応主人公ですがあまり活躍の場はなくいつもアクタベさんやさくまさんにひどい目に遭わされます。
で、
魔界では恐ろしい姿の悪魔も、地上に召喚された時はかわいらしい姿(参考)
とか、
悪魔が出てくるだけあって天使やさらにその上に君臨する神も出てくる
とか、
出てくる悪魔の名前が古代イスラエルのソロモン王が使役したという72体の悪魔と同じ
とか、
生身の人間なのに悪魔より強いアクタベさんの素性とは何なのか?
とか、あるいは
さくまさんがかわいい(参考)
とかいろいろ見所がある作品なのですが、「ひどい要素」もいっぱいなのです。思いつくままに並べると以下の通りとなります。ちなみに初読の際は体調が悪く、読んでいて胸焼けがしそうでした。
アザゼルさんの特技は「セクハラ」
マスオさん似に夫とタイ子さん似の女の不倫調査を芥辺探偵事務所に依頼してくるサザエさん似の妻
さくまさんが通う大学のオタクサークルに所属している男女が例外なく不細工
「そういう要素も魅力の一つだよねー」という範囲を超えてがっつり利己的でお金に汚いさくまさん
依頼をこなして解決はするが、だいたいは幸せな結末にならない
悪魔の一人ベルゼブブ(あだ名はベーやん)は蠅の悪魔なのでウンコ大好き(食物という意味で)
六本木を徘徊する市川海老蔵似の暴漢
魔界では人を気軽に惨殺している悪魔たち
悪魔同様に天使も登場するが、痴漢を見て見ぬふりしながら「あれは悪い事だ」と思う「だけ」の駄目な感じの男という描写
登場人物が発狂寸前になる場面があるが、挙動がおかしくなる描写がやたらリアル
上記のような「ひどい要素」が突き付けており絵もどちらかというと可愛らしく、エンターテイメントとして奇妙な均衡を保っている、という不思議な作品だと思います。島耕作シリーズ*1が連載してたりする、講談社の「イブニング」という雑誌で2013年12月現在連載中です。
あと、一応説明しておくとpixivはアニメや漫画などを題材にしたいわゆる「二次創作」作品が質、量共に現在最も活発に投稿されているWEBサービスで、「アクさく」とか「ベーさく」という言葉は、「その登場人物たちがもしカップルになったら」というシチュエーションを想像して作られた二次創作作品およびそのジャンルを指す際に使われます。「アク」とか「さく」とか「ベー」とかあるいは「アザ」といった登場人物を略したキーワードを組み合わせるとカップルを指す(そして順番も重要)という所作は、古くはキャプテン翼とか聖闘士星矢とか鎧伝サムライトルーパーとか、そういうキーワードで判る人もいるのではないでしょうか。
まあ、そういうものだ(So it goes.)。
「こうなったら面白い」とばかりにカップリングを見出せる、想像を掻き立てる魅力がある作品という事なのでしょう。講談社というメジャー出版社で発表されていると感じさせない、「なんだか判らないけど凄い」と思わせる作品の力が私に新刊を買わせ続けるのでした。
ではー。