高杉さん家のおべんとう(柳原望、 KADOKAWA / メディアファクトリー)
- 作者: 柳原望
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: Kindle版
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数年前に漫画関連のWEBサイトで評判となっているのは知っていたのですが、物語の設定(30台独身の男の家に中学一年生の美少女が同居する事になった)がいかにも男オタク狙いではないか、と思ってなんとなく敬遠しておりました。
が、2014年7月11日に「となりのトトロ」がテレビで放送されるにあたり以下のような話題がtwitterにて挙がっており、その関連で「非常勤講師を描く漫画として秀逸らしい」という評判を知り、興味を持ち買ってみる事にしました。
「となりのトトロ」お父さんは非常勤講師、という話題から時代や経済状況を語る - Togetterまとめ
単行本1~2巻をまずは買い、「評判に違わず面白い」と確信して後日2014年7月現在の最新刊である8巻までを買い、読みました。
間違いなく面白いのですが、とりわけ6巻~7巻あたりの展開に衝撃を受けて、興奮なのか動揺なのか分からない状態が今も続いています。
そして久々にブログに感想を書きたい、という気持ちになりました。
正直この気持ちが何なのかよくわからないのですが、奥さんに連れられて良いお芝居を観に行った後の状態と似ているので、心動かされたという事は良い作品なんだろうと思っております。
とりあえずネタバレで書きますので以下、閉じておきます。
30代の独身男性で、博士号はあるものの定職が無い、所謂「ポストドクター」状態の高杉 温巳(たかすぎ はるみ、通称『ハル』)の家に、亡くなった叔母の娘で中学一年生の女の子、久留里(くるり)がやってきて同居する事になった、という物語です。
いきなり家族になった二人が、お弁当(ハルが作る)や晩ごはん(久留里が作る)を通して仲良くなり、家族として成長していくというのが本筋で、これが丁寧に描かれていてとても素敵なのですが、
毎回久留里とハルが作る料理がうまそう
ハルの専攻している地理学のフィールドワークや大学研究者の描写がよい
ハルと同僚の小坂さんとの仲が気になる
久留里の通う中学校におけるいじめ方のリアルさと解決方法の鮮やかさ
小坂さんかわいい
久留里がかわいい
という素敵な要素もあり、大変気に入ってしまいました。
そうやって読み進めていたら、6巻から7巻の展開に衝撃を受けました。ええー?ええええー???!!!という感じです。
この作品の良いなと思うポイントの一つ、
ハルと同僚の小坂さんとの仲が気になる
についてなのですが、ハルと同じ大学の研究室で働いている同僚の「小坂さん」は、29歳(初登場時)の女性でハルに密かに好意を寄せています。
大学や研究機関への公募も通らず、うだつの上がらない助教であるところのハルも小坂さんに好意を持ち、だんだん仲良くなっていく描写が続いていて、「31才のハルはここで小坂さんに対して頑張らないと後が無いだろう」とかなり肩入れして読んでいたものです。
が、ドイツへの海外赴任の話が持ち上がって日本を離れる事について悩む小坂さんは、ハルの言動からある決意をし、ドイツに旅立っていきます。
問題はその後です。半年間の赴任期間が終わり帰国してきた小坂さんに久々に会ったハルは、同じ研究室の学生である丸宮くんと小坂さんが付き合う事になったと知らされます。
丸宮くんは小坂さんがドイツに旅立つ飛行機のチケットを取って現地まで見送りに行ったり(お金ないので宿泊せず日帰り)、それをきっかけに小坂さんとメル友になって少しずつ仲良くなって*1結果的に付き合う事に成功したのでした。手をこまねいている間に、ハルは行動力のある若者に好きな女性を奪われてしまった格好です。
これは衝撃的でした。作品の初期から登場し、ハルへの好意を隠していない小坂さんは物語の中でヒロイン扱いのはずでした(少なくとも私の中では)。
ちなみに久留里も父親代わりのハルに対してほのかな好意を寄せていたりするのですが、それを知った小坂さんは自分の気持ちをこっそり久留里に打ち明けて打ち解け、久留里の相談相手みたいな立場になっていました。
なんというか、「あ、小坂さんこれ最終的に久留里の母親的な立場になっちゃう?」という予想を密かにしてたりしてたんですね私は。
それが、「おいおい脇役とくっついちゃったよ!」という訳です。
擬似的な父と娘だし、色々大変だけどなんとか二人で頑張っていく様がほんわかとした絵柄で描かれ、かつポストドクターが大学教員になる事の大変さ、かつなってからの苦労、そして地理学についての実際的な紹介をしつつ、素敵なドラマが展開していく中で、なぜ、なぜそこでヒロインが他の男に奪われてしまう(しかも実際にありそうな感じで)のよ?!という気持ちになりました。
この物語が長く続いて行く中での一つの出来事、という事で、もしかしたらハルと小坂さんがこの後くっつくという展開ももしかしたらあるのかもしれませんが、そうなった場合、一緒にハルへの気持ちを分かち合った久留里から小坂さんはどういう人に見えるのか?とか気になってしまいます。
かといって新たな女性が登場とか、宇仁田ゆみの「うさぎドロップ」のごとく、大きくなった久留里とハルが結ばれる展開もちょっとなあ・・・。
ハルは出身の研究室の教授の計らいで助教になりましたが、その後与えられた准教授になるチャンスも逃し、別の大学の講師になるチャンスも逃します(しかも競った相手が小坂さんで、小坂さんに負ける)。仕事も恋も良い所が無い主人公に、最終的に良い事が起きるための長い長い伏線で合って欲しいと思っています。
ネット上でもこの展開は賛否両論の模様*2ですが、ともかく多くの人が関心が持っているのですからやはりこの作品は面白いと思います。
もう、今後が気になって仕方ありません。9巻は9月頃発売でしょうか。うおー早く読みたい。
なお、8巻で小坂さんとハルが会い、ハルが「丸宮くんとはうまくいってるの?」と聞き、小坂さんがのろけるシーンを読んで、「噴水」(堀口大学 作詞、木下牧子 作曲)という合唱曲を大音量で聞きたくなりました。「雨のやうに 涙のやうに」「哀れさびしく落ちて来るのは」「彼女を恋する哀れな私の心であるか?」ですよううう。
ちなみにこんな曲です。
噴水 - 木下牧子 - 男声合唱曲集 「恋のない日」 - YouTube
2chの作品スレッドで小坂さんはひどい評価になってしまっていましたが、私としては今後、ハルと小坂さんとの復縁展開を期待するものです。親子として過ごした後の久留里との恋愛展開だけは避けて欲しい、今のハルの境遇だとそれは逃げじゃないか、と思うのです。
久々に漫画に対して熱くなってしまいました。良い漫画に出会えて幸せだーうおー。
ではー。
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*1:この行動力とか熱意は見習いたい
*2:「高杉さん家のおべんとう 小坂さん」でgoogle検索すると色々出てきます