祈りの海(グレッグ・イーガン、早川書房)
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/12
- メディア: 文庫
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社会人になりたての頃に、面白いSF小説を探して書店に行った際にとりあえず目に付いた本を買ってみる、という事をしていました。その結果、テッド・チャン著「あなたの人生の物語」という大変面白い本に出会いました。
ちなみにこれです。
- 作者: テッド・チャン,浅倉久志・他
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/09/30
- メディア: 文庫
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この本は凄いのでお薦めしたいのですが、それはさておき、先日ネットを巡回していたら「あなたの人生の物語」の書評をしているブログを見つけたので読んでみたところ、そのブログのはてなブックマークにて「テッド・チャンはグレッグ・イーガン級に凄い」という趣旨のコメントがありました。
前置きが長くなりましたがそれで興味を持って買ったのが、グレッグ・イーガンの「祈りの海」という本です。最近ようやく読み終わったので感想を書きます。
いくつかの短編が入っているのですが、どれも舞台は現在よりも高度に科学や技術が発達した未来となっています。これらが物語の鍵になるのですが、存在しない科学や技術にも関わらず、大変説得力があり将来こういう事物が実現されるのではないか、と思わされました。
例を上げると、
・発達したバイオ技術と情報技術によって実現した、卵子が無くても精子だけで産まれる愛玩目的のための赤ん坊(物語の中でも倫理的にかなりグレーに扱われています)
・将来同性愛者になる原因になる酵素を母親の胎盤に送らない技術を作って密かにに売り込もうとしている製薬会社
・脳が老化する前に「宝石」と呼ばれる脳と全く同じ動作をするコンピュータと交換する技術が普及した世界
・地球から移り住んだ人々によってテラフォーミングされたが何らかの理由で人々が滅んだ数万年後に独自の発達を遂げたた惑星
などです。SF好きとしてはこれらの周到に用意された舞台にしびれてしまいますが、さらに凄いのは、用意された技術に翻弄されて悩む人間が描かれる事です。
例えば、同性愛者が産まれる可能性を排除する技術を売ろうとしている事を知った、同性愛者の探偵*1は、自身も差別に遭って来たので阻止すべきなのか良い事なのか悩んでしまいます。サラッと書いていますが、哲学の領域のような問題だと思います。
ただ難点としては、未来の科学技術を現在の最先端のものからの延長線で描いているので、ちょっとした自然科学の知識が無いと良くわからない場合があります。私も書いてある舞台についての説明を全て理解したかと問われると、かなり怪しいと言わざるを得ません。話の筋は大体理解は出来ますが、読む人を選ぶかもしれないです。
しかし、凄いSF小説である事には間違いありません。次は長編を読んでみようと思います。
ではー。
*1:正しくは民間警察会社の職員