部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

はなしっぱなし(五十嵐大介、河出書房新社)

はなしっぱなし 上 (九龍COMICS)

というわけで五十嵐大介である。画が凄いのであるが、どう凄いのかを文章で表現しようと努力しても、あまり良い結果にはならない気がする。それくらい凄いのである。「いいからまず読んでみ」としか言えない。

多分、漫画作品の一ページ、一コマづつを切り出して展示して、美術館で個展ができると思う。芸術の域に入っている。


物語は「自然」や「昔からあるものごと」が起こす不思議な出来事が一話ごとに語られる、という形だが、圧倒される。古い家に1人で留守番していた時に家鳴りがとても怖くて家から逃げて近所の公園に親が帰るまでいたころの気持ちを思い出させる。


人魚を売る行商の老婆、かたつむりに魅入られた少女、始発電車に乗る弔問客、走っている電車を追いかけるかに見えるシャツなど、これらは僕も小学生ころまでは持っていた感覚だと思った。だから子供のころを思い出すのだ。「ああ、僕もかつてこのようなものに畏怖の念を感じていたなあ」と。目に見えないものを信じて畏れて敬っていたはずだ。


そういったとても親しく、遠くなっていた物事が、恐ろしく大胆で細かい描写で訴えてくる漫画なら、これは凄いとしか良いようがない。アーティストを名乗る人、志す人の何%かは、絶対に読んで影響を受けているはずである。これを読んでゲームなり小説なり映画なり作って欲しいと思う。「ガガガガ」とか。

あと、これだけは書いておきたいが、物凄くエロい。別に直接描写はないのだが、エロすぎる。個人的には「口から鈴の音するでしょう」と「華と豺」を読んで身悶えする。殆どの話に女の子が狂言回しとして出てくるのもエロい証拠である。そして、女の子はもちろんかわいい。作者に握手したい。


余談だが月刊アフタヌーン岩明均が「寄生獣」を連載していて、トニーたけざき黒田硫黄五十嵐大介が漫画を描いていた時期、本当にこの雑誌は凄いと思ったものである。最近はそのころのわけのわからない凄さはそんなに無いが、高野文子の新作が載るだけで価値のある雑誌だと思う。要するにアフタヌーンが好きなのである。

で、小学館のIKKIが創刊されて五十嵐大介が連載始めると聞いたときは嫉妬してしまった。でも「魔女」も凄いですよねー。面白ければ何でも読むべきなのだ。