自転車に乗ったお爺さん

先日、合唱練習の帰りに仲間と歩いていたら、前方の路上に自転車の下敷きになって倒れているお爺さんがいたので仲間と一緒に助けた。どうやら自転車に乗っていて転倒したらしかった。
お爺さんは1人で立ち上がれないようだったのでどこか痛めたのかと思い、痛いところはないかと質問をしたが返事をしない。これは救急車を呼ぶべきかと考えていたところ、たまたまお爺さんと知り合いのおばさんが通りがかり、お爺さんの住まいが、すぐ近くである事を教えてくれた。お爺さんはいつもこの時間に自転車で弁当を買いに行くそうで、今日も弁当を買いに行く途中のようだった。おばさんが弁当を代わりに買ってくる事になり、僕達はお爺さんを家まで送る事にした。
肩を貸すと少しづつ歩けるようなのでゆっくりとお爺さんの家に向かっている途中に、お爺さんは怪我をしているから歩けないのではなく、元から歩くのが難しいくらい足腰が弱っている事がわかった。また、お爺さんはかなりお酒を飲んでいるらしく、口からウィスキーの匂いがした。

お爺さんの住まいは古いアパートの2階だった。階段をゆっくり上り、部屋まで送った。お爺さんは別れる前に僕の肩を叩き、途切れ途切れになりながらも「どうもありがとう」と言った。お爺さんは一人暮らしだった。

帰り道は皆、なんとなく無口になった。