部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

漂流教師(パルコキノシタ、青林堂)

漂流教師

漂流教師

というわけで「漂流教師」である。楳図かずおの「漂流教室」ではなくて、「漂流教師」である。美大出身の小学校教諭と生徒とのふれあいを描いた漫画である。でも別に感動巨編ではない。でもなんだか面白かったなあ。

そういう記憶が残ったまま、本棚の奥にしまったままだったのだが、たまたま別の本を探している時に見つけ、久しぶりに読んでみたのである。大変面白い漫画であった。小学校教諭を志す方が読むと良いと思いました。酒造会社に勤めている方に「夏子の酒」を読んで欲しい*1のと同じぐらいの強さでそう思った。

美大を卒業後に就職に失敗し、臨時採用の地方公務員として埼玉の小学校で教師なった木下先生が主人公である。木下先生は美大出身であることもあって、3月には卵の殻を使ったお雛様を教室に飾ったり、大学の同級生だった芸能人を授業に連れて来たりして、一味違う授業や教育を目指している。そんな木下先生が小学校で出会う出来事が描かれる。

親の宗教上の理由でひな祭りや運動会に出られない子供とか、転校して来たばかりで馴染めないうちに喧嘩をして、カッターを持って斬りつけてきた子供とか、ほかにも色々、小学校だけど「中学生日記」のようにドラマが起こる。これがかなり深刻な事情の場合が多い。木下先生は熱意で立ち向かい、説得して解決したり、無理やり勢いで解決したり、あるいは解決できなかったりする。子供に対する熱い姿勢は変わらない。

自分のクラスの32人の子供たちが大事で、とてもポジティブで、時に熱すぎて暴走する木下先生の描写と、非常にやるせない学校の現状(運動会で子供を小突くとPTAがうるさいので蔭で傷が目立たないように体罰を加える先生、精神的に子供を追い詰めて体罰の代わりとする先生の存在)がシリアスに描かれる事や、それでも教育を諦めない先生たちの描写が素晴らしいと思った。

ちなみに作者は実際に小学校で教師をした事があるらしく、学校の描写がとても細かくて実際にありそうに思わせてくれる。

例えば家出した生徒が出たときに学校に先生方が集合する事とか、教頭が外車で通勤しているので何となく他の先生に嫌われている事とか*2、怖いベテランの女性の主任の先生とか、体育館で集会する時には回りに先生が立つとか。


なお、作者は今は現代美術家らしい。会田誠とかと一緒にグループ組んだりしているそうです。


大変だけど「三日やったら止められないほど面白い」と言い、今日も子供達に教えたり教えられたりする木下先生の奮闘を描くドラマである。これ続き描いて欲しいなあ。あと清水先生素敵ですわ。子供と触れ合う機会のある人にお勧めです。ていうか心当たりのある知人に片っ端から貸し出す事に今決めました。

あと、画像は無いけど、装丁が凝っている。表紙がコクヨの出席簿みたいで、裏表紙にもビッシリと「コクヨ」のマークの代わりに「パルコ」と描いているのが細かくて素敵です。この本を読むときのBGMはユニコーンの「PTA〜光のネットワーク〜」で。

*1:社員食堂に常備してある酒造会社も実際あるそうです

*2:この場面の際の木下先生がなぜか「ねじ式」の主人公みたいなポーズをしているのがニヤリとした