部屋を掃除したら漫画が沢山出てきたので書く日記

漫画とか合唱とかUNIXとかLinuxとかについて書く日記です。

天才ファミリー・カンパニー(二ノ宮知子、幻冬社)

かつて、ソニー・マガジンズという出版社から「きみとぼく」という女性向け月刊漫画雑誌が出版されていましたウィキペディアによると1994年創刊となっております。姉が創刊号を買ってきて読ませてくれたのを覚えておりますので、僕が中学生の時に読んだ事になります。この頃姉や妹が購入していた「りぼん」「ひとみ」「なかよし」「ぴょんぴょん」には載っていないような絵柄の漫画が載っていて、不思議な雑誌だなあと思ったのを覚えています。思い出としては

藤原薫がここでデビューした
藤枝とおるの漫画は絵が素敵で好きだった
さくらももこの「コジコジ」が連載されていた
・「スプリングマン」というユニコーンのアルバムと同名の漫画が連載されていた
・「いかるがいるか」という人の漫画が素敵だった
・段々BL系漫画が増えていって読むのを止めた。村上真紀の「グラビテーション」のモロBL描写は中学生男子にはきつかった

という感じです。
そしてこの雑誌で一番楽しみにしていたのが、二ノ宮知子の「天才ファミリー・カンパニー」でした。

二ノ宮知子と言えば「のだめカンタービレ」で有名になったと思います。「のだめカンタービレ」と同じく、独特のコミカルな登場人物が魅力的です。

高校生男子である夏木 勝幸が主人公です。勝幸は製菓会社で働く(役職は部長)母親の良子と二人暮しです。父親は事故で亡くしており、父親と同じ証券マンになるという夢を持っています。高校生ながら日経新聞を愛読し、母親の仕事のために企画資料の作成をし、バブル期の日本の金融政策のまずさを憂い、株取引によりかなりの利益を上げ、ハーバード大に留学してMBA取得する事を目指しているという、ビジネスに関する天才少年です。
「俺は他の奴とは違う」という意識が強く、かなり嫌な奴です。友人の有吉への扱いもひどいし(有吉もかなり変なキャラではありますが)。
学校では当然のように成績優秀で、同じクラスの永沢京子という、同じく成績の良い女の子から相談を持ち掛けられたりしてドキドキしたり、母親の仕事を手伝いながらビジネスの勉強をして将来ハーバード大に留学する事を目指す毎日を過ごしています。

ある日、良子が「この人と結婚する」と言って家に連れて来た、田中 荘介(作家らしいがしばらく書いていない)とその息子の春(勝幸と同年齢)がやって来て一緒に暮らす事になってから、勝幸の生活がドラマティックに変わって行きます。
「ビジネス、経済、お金」というキーワードで満ちていた勝幸のこれまでの生活に、「家事、陽気、のんびり」といったキーワードに満ちた荘介と良子夫婦、春が入り込んできます。勝幸は嫌で仕方が無いので拒絶します。家事を行う荘介がどんどん近所と仲良しになったり、同じ高校に転校してやってきた春がクラスメートと仲良くなったり気になっている京子と接近したりして、勝幸はこれまでのペースが守れなくなってきます。

ここまでの勝幸はかなり嫌な奴です。そのぶん春や荘介、有吉がのほほんとして(し過ぎて)おりバランスが取れています。のだめカンタービレで言えば千秋とのだめ、峰みたいな関係です。

ある日アメリカの出版社から荘介宛に電話が来るのですが、春&荘介親子にイライラしていた勝幸は「彼は死にました!」と嘘をついて電話を切ってしまいます。すると世界各国から田中親子の知り合いが葬儀に参列するために続々と夏木家にやってきます。そこで田中親子は世界中に知り合いがいる事をしり、なんだか凄い奴らなのではないかと勝幸は考えます。

荘介が死んだというのは誤報だったとわかった知り合い達は帰って行きますが、林(リン)さんという中国人のお爺さんとアミィというアメリカ人の12歳の女の子(春の事が好き)が何故か夏木家に居付いてしまいます。田中親子と林さん、アミィに振り回される勝幸が描かれます。

ここまでだとなんだか楽しいコメディ漫画みたいなんですが、この漫画が凄いと思うのは、この後の展開です。

母親が理不尽な理由で会社から追われ、アミィと林さんの素性が明らかになり、京子の父親の事業が傾いて危うくなる、といった状況が発生し、勝幸が己の才覚を活かしてビジネスシーンで活躍していくのです。当時先端技術だったインターネットを活かしたビジネス展開や、画期的なセキュリティソフトを巡る陰謀も描かれます。当時ここまでインターネットビジネスに関する描写が出来たのはかなり凄いと思います。丁寧な取材をしている事が伺えます。

基本は楽しいギャグ漫画ですが、展開されるストーリーは壮大なものです。二ノ宮知子ファンなら知っているでしょうが掲載雑誌が休刊になった事もあり、いまいち知名度が低い作品です。隠れた佳作と言えるのではないでしょうか。

ではー。